意図的再植術(歯の再植)
「歯の根元の病巣が大きくて、根管治療では治せない」
と言われたことはありませんか?
根管治療で治せない場合、
①歯根端切除術をする
②抜歯をして、他の歯を移植する
③抜歯をして、義歯を使う
など、治療にはいろいろな選択肢があることはご存知でしょうか。
今日は、以上のどれにも当てはまらない別の選択肢をご紹介します。
その名は、
「意図的再植術(いとてきさいしょくじゅつ)」です。
簡単に説明すると、
一度抜歯をして、病巣をとったらまた同じ場所に植える、という方法です。
歯を残すために抜歯をする、
ということなのですが、
イメージしづらいですよね。
実際に治療した例を見てみましょう。
レントゲン写真です。
真ん中あたり、黒くなった丸い部分が病巣です。
炎症により広範囲に骨が溶けています。
別の角度から見たレントゲン写真です。
歯の根の周りに大きな病巣があります。
まずは根管治療をして、
炎症が落ち着いてくるか確認してみます。
根管治療後の写真です。
治療により歯の中はきれいになったのですが、
歯ぐきに炎症が残っています。
これでは骨の中の病巣も治っていません。
病巣が大きいため、歯の外側が汚染している可能性があります。
つまり、根管の中を治療しても治らないのです。
そうなると、たいていは「抜歯をしましょう」と言われます。
ただし、条件によっては抜歯をせずに歯を残すことができるかもしれません。
今回は、病巣の大きさから「意図的再植術」という治療法を選択しました。
まず、一度抜歯をします。
見えるでしょうか。
矢印の先の部分に注目してください。
歯の根の先に歯石のようなものが付いています。
これが根の外側に付着している汚染物質です。
また、先端のあたりは根管が枝分かれしている場合が多く、そこも根管治療で治らなかった原因であることが考えられます。
そこで、根の先端を切除して、汚染している部分をすべて取り除きます。
根の先端を切除して、
先端側から根管をきれいにしたら、
専用のセメントで根管を封鎖します。
これにより、再び根の中から周りに汚染物質が出ないようにするのです。
ちなみに、
根の周りの病巣には何が詰まっているのでしょうか。
じつは、
こんなものが骨の中に溜まっているのです。
細菌を含んだブヨブヨした組織です。
これをすべて取り除いたら、歯を元の位置に戻します。
はじめのうちはグラグラしないように、
縫ったり、隣の歯と接着して、固定しておきます。
手術をした当日のレントゲン写真です。
根の周りには骨がないので黒く見えます。
この後、抜いた歯と骨が再びくっついて、病巣が治っていけば治療は成功です。
3ヶ月後の写真です。
歯はグラグラせず、しっかり骨とくっついています。
歯ぐきの腫れも治りました。
もちろん痛みもありません。
レントゲン写真です。
当時、病巣があった部分に徐々に骨ができてきているのがわかります。
治療の前後を比較してみましょう。
いかがでしょうか。
病巣が治ってきていますよね。
この後、
仮歯をかぶせて食事をとってみて問題がなさそうであれば、
かぶせ物をして治療終了です。
引き続き慎重に経過をみていく必要はありますが、
まずは歯を抜かずに病巣を治すことができました。
ただし、
この治療法は様々な条件をクリアしている場合にのみ適用できるものであり、
すべての歯にできるわけではありません。
また、
治療後は根が短くなり、
再植すると骨と癒着しやすいこともあって、
他の歯より寿命が短いことが多く、
歯の延命ができるかもしれないというくらいのイメージで考えておいてください。
それでも、
「抜歯するしかないと言われたけど他に残す方法はないだろうか」
お悩みの方、気になる方は多いと思います。
もしかしたらまだ残せる方法があるかもしれません。
一緒に考えましょう。
アズ歯科桶川院へぜひ一度ご相談ください。
治療期間 | 4ヶ月 |
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治療費 | ¥150,000 + tax |
治療のリスク | 治療後に抜歯が必要になる可能性がある |