歯ぐきが腫れるのは根が折れてるから?
前歯がムズムズするという主訴の患者さんです。 差し歯の付け根が黒くなっているからやり直したいというお気持ちもあり、一度差し歯を外して診てほしいというご希望でした。 たしかに差し歯と歯根がピッタリではなくなっています。 歯ぐきが下がったのでしょうか。 前歯3本が差し歯になっていました。 差し歯を裏側から見たところです。 こちらも歯根が見えてしまっています。 しかし、ここで一つ心配なことがありました。 「歯がムズムズする」という症状です。 ここで注目してほしいのが下の前歯の位置です。 1本出っ張っていて、明らかに上の前歯を押しているように見えます。 局所的に当たる力があれば、その歯の負担は大きくなります。 そのような負担が続くとどうなるのでしょうか。 当時のレントゲン写真です。 負担が大きいと歯根に破折(クラック)が生じることがあります。 そうすると限局的に歯周炎が起きて、レントゲンでは黒い吸収像が見えるのですが、そのような所見はありませんでした。 被せ物を外してみました。 裏側から見たところです。 この時点では明らかな破折線は認めません。 しかし、外した状態で噛んでもらうと、やはり下の前歯がこの上の歯に強い力をかけている噛み合わせであることは明らかでした。 この時点で、「歯がムズムズする」症状の原因は、 歯にかかる負担、つまり噛み合わせの力である可能性が高く、 前歯の歯科矯正、歯ならびの治療をご提案しました。 その治療法では治療期間が長くなるとのことで、患者さんは歯科矯正治療を希望されませんでした。 金属の土台を外したところです。 残っている歯の量は少ないですが、この時点でも明らかな破折線は認めなかったため、 根管治療ののち、再び新しい土台を作りました。 コンポジットレジンという白い材料を用いて土台を作っています。 金属よりも残っている歯にかける負担は多少軽減できます。 それでも下の前歯による突き上げの力がかかることは変わりません。 新しく差し歯を作りました。 「歯がムズムズする」感じも気にならなくなったとのことでした。 一件落着かと思われましたが、 その数ヶ月後、歯ぐきが腫れてきたとのことで来院されました。 差し歯にしたところの付け根のあたりです。 痛みはさほどないとのことでしたが、明らかに赤みがかっており、炎症が起きているのは明らかでした。 その時のレントゲン写真です。 この時点では根元の周りに明らかな骨吸収像はありません。 しかし、放っておくと炎症が進み、より広範囲に悪影響が出ると判断し、一度差し歯を外して確認することにしました。 こう見てもまだ破折線は認めません。 白い土台を外した時でした。 はっきりと破折線を確認できました。 ちょうど歯ぐきが腫れている部分と一致したため、これが炎症の原因と断定し、そうなると炎症を治すためには抜歯が必要になりました。 抜歯時の写真です。 中をよく見てみると、 歯ぐきが赤くなっていた部分の骨が溶けていました。 抜いた歯を見てみると、歯根にくっきりと破折線が見えます。 その部分だけ歯周組織が炎症により溶けてしまっているのがわかります。 歯周組織をとっていくとはっきりと破折線が見えてきます。 抜歯した部分の歯ぐきがきれいに治ったのち、患者さんの希望により隣の歯も削ってブリッジにしました。 処置後、数ヶ月経過した際の検診時の写真です。 今では歯ぐきの腫れもなく、歯の付け根も新しい被せ物によりきれいに覆われています。 ブリッジの形を調整して部分的な強い力を受けないようにはしていますが、噛み合わせの下の歯は同じ位置にあるため、今後も突き上げによる力の影響は少なからず受けることと思われます。 患者さんと相談の上、一緒に経過をみているところです。 治療前 治療後 いかがでしたか? 今回は、歯が折れると歯ぐきが腫れてくるということ、そして、その原因は歯ならびも影響していることをお伝えしました。 ブリッジという治療の選択肢を希望された内容でしたが、インプラントの治療が気になる方はぜひ下記の症例もご覧ください↓ インプラント前歯の症例を見る また、噛み合わせのために下の前歯を治療したケースもあるので、気になる方はこちらもぜひ見てみてください↓ 噛み合わせを考えた部分矯正(mtm)の症例を見る 治療期間 8ヶ月 治療費 ¥320,000 + tax 治療のリスク 他の歯も破折する可能性がある
2024.01.02