歯を失ったときの選択肢

審美面・機能面で選ぶなら
「インプラント」

「インプラント」とは、顎の骨に器具を打ち込み、それに人工歯をかぶせて失った歯の代わりにするものをいいます。

このインプラント治療は、審美面で非常に優れています。人工歯の輝きは自然であり、一目見ただけではまず人工の歯だと気づかれることはありません。比較的目立つ位置の歯を欠損した場合でも人目を気にする必要はなくなりますし、鏡に向き合うのも楽しくなるでしょう。

また、インプラントの場合は「自分の歯で噛んでいるのと同じ感覚を味わえる」という大きなメリットもあります。顎の骨に器具が撃ち込まれているため、天然の・自分自身の歯と同じように食べ物を噛むことができます。「食べること」に喜びを感じる人には非常に魅力的に映るでしょう。

加えてインプラントは、入れ歯などのように「取り外して洗う工程」を必要としません。自分の歯よりは丁寧なブラッシングが求められるものの、自分の歯と同じようにお手入れしていくことができます。

ただし、インプラントは非常に高額です。またインプラントは、喪失した歯の本数がそれほど多くないときに適した治療方法であり、歯の喪失本数が多い場合はこれを選びにくいこともあります。

入れ歯とインプラントの中間点、
インプラントオーバーデンチャー

インプラントオーバーデンチャーは、「入れ歯」と「インプラント(下記以降では、分かりやすく分類するために『通常インプラント』とする)」の中間点に位置するものです。

インプラントオーバーデンチャーでは、まず入れ歯を作ります。そして顎の骨に打ち込んだ器具を使ってその総入れ歯を保持するのです。

顎の骨に打ち込まれた器具によって総入れ歯を支えるため、一般的な入れ歯と異なり、入れ歯が動いたりずれたりする可能性はほとんどありません。そのため食事をとりやすく、自分の歯のような感覚で使うことができます。またインプラントオーバーデンチャーも通常インプラントも保険対象外ではありますが、利用するものが「入れ歯」であるため、通常インプラントほど高額にはなりません。

「喪失した歯が多いので、一本一本通常インプラントにするのは厳しい。ただ、できるだけ自然な噛み心地を味わいたい」という人にとって、インプラントオーバーデンチャーは非常に優れた選択肢となるでしょう。

ただしインプラントオーバーデンチャーは外科手術を伴う都合上、選べる人に制限が出ます。また、インプラントオーバーデンチャーの施術をした場合は術前後の喫煙は禁止であるため、煙草が好きな人には選びにくい選択肢です。

またインプラントオーバーデンチャーは、「総入れ歯」と「部分入れ歯」の2つに分けられますが、後者の場合でもインプラントオーバーデンチャーが「残っている自分の歯」にかぶせられることになるため、自分の歯に負担がかかりやすくなります。特に虫歯になるリスクが上がるため、より丁寧なケアが必要となるでしょう。

安価での治療ができる
「入れ歯」

「入れ歯」は、歯を失ったときにこれを補う方法の第一の選択肢です。現在はインプラントなども選択肢としてよく挙げられますが、これを利用している人はどの世代でも5パーセントを超えていません。

対して入れ歯の装着率は非常に高く、80歳～84歳のうちの42.4パーセントが部分入れ歯を、31.3パーセントが総入れ歯を使っているという結果が出ています。85歳以上の人に限れば、全体の約93パーセントが部分入れ歯もしくは総入れ歯を利用していると結論付けられています。

これは平成29年のデータではありますが、令和5年の現状でも大きな違いはないと考えられています。

入れ歯は非常に普及率が高く、作り方はもちろんその出来も安定しています。また何よりも非常に大きいのは、ほかの2つの方法とは異なり、入れ歯は原則として保険適用範囲で作ることができるという点です。つまり入れ歯の場合は、自己負担割合が0割～3割(※所得などで異なる)で作ることができるのです。これは非常に大きなメリットでしょう。

実際、現在の入れ歯は非常に進化しているため、「審美面にこだわりはない」「噛み心地などにはあまりこだわらない」という人にとっては、入れ歯という選択肢は非常に有用です。(※材質などによっては、入れ歯であっても保険適用範囲外とされることもあります)。

このように有用な「入れ歯」ですが、入れ歯にはどうしても「ズレ」のリスクがあります。また外れることもあります。取り外して丸洗いができるのは大きなメリットですが、その手間が面倒と感じる人の場合はインプラントを選択肢のひとつとして考えた方がよいでしょう。

出典：厚生労働省「平成28年歯科疾患実態調査」の結果(概要)を公表します～8020達成者は2人に1人以上で過去最高～

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